おはようからおやすみを笑顔で。
上半身を起こして水を口に含む。
冷たい水が美味しくて、身体が落ち着いていく。
……ついでに頭も冷えた気がした。


「ごめんね、妊娠したかもとか、変なこと言って」

そう謝ると、彼は特に気にした様子もなく、
「沙耶がそそっかしいのはわかりきったことだろ」
と言って、軽く笑う。


……ほんと私、そそっかしい。
妊娠したかもしれないって思うだけならまだしも、妊娠してたら斉野くんも喜んでくれるに違いないって思ってた。


本当は、きっとそんなことない。
斉野くんは子供を欲しがってない。


そう考えたら、涙が出てきた。


「沙耶? どうした、具合悪いのか?」

彼が心配そうに私の顔を覗き込んで、頭を撫でてくれる。


具合が悪い訳じゃない。でも、心が痛い。


斉野くんが大変な立場の人だってことはわかってる。

だけど、彼のことが好きだから……一生一緒にいたいからこそ……



「……斉野くんは、子供、欲しくないの?」


……ちゃんと、彼の気持ちが聞きたい。


私の価値観を押し付ける気なんてない。だけど、話し合うことはしたい。


だから、聞いてしまった。

彼の顔を見ると、ぽかんとした表情で私を見ていて、いきなりバカな質問をしてしまったかなと恥ずかしくなった私は、彼から目を逸らして俯いた。
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