おはようからおやすみを笑顔で。
そうして到着した、フレンチレストラン。
受付で門前払い……ということにはならなかったけれど、そこは想像以上にラグジュアリーな空間。
一見、モダンで落ち着いた雰囲気ではあるものの、高さ五メートル以上はある大きな窓からは眩しいくらいの東京の夜景が一望出来て、とても贅沢かつロマンティックだ。


勿論、お料理も言うまでもなく絶品で……赤ワイン煮込みの和牛なんて、口の中に入れた瞬間にとろけるかと思うくらい柔らかくて、味わったことのないほど美味しい。


「美味いか?」

いつもと変わらない落ち着いた様子で、斉野くんが私にそう尋ねてくる。


「うん! 凄く美味しい! でも、今日は突然どうしたの? こんな高級なお店で食事なんて初めてじゃない?」

斉野くんは普段はほとんど贅沢をしない。
勿論、収入は私とは比べ物にならないほど多いのだけれど、彼自身が贅沢を好まない性格なのだ。

だから気になってそう質問したのだけれど、彼からは「まあ、今日くらいは良いだろ?」と返される。

今日くらい……? 今日ってなにかあったっけ?

気にはなったけれど、それよりも目の前のお料理の美味しさの方に意識が向いてしまったので〝まあいいか〟と思うことにした。
< 117 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop