おはようからおやすみを笑顔で。
わ、私なにか彼を怒らせてしまうようなこと言ったかな? でも部屋に入る直前まではいつも通りの斉野くんだったし、この部屋に入ってからも夜景が綺麗だねとしか言ってないし……。


私がひたすら戸惑っていると、斉野くんが急に立ち上がる。もちろん、怖い顔をしたままで。



「さ、斉野クン?」

尋常じゃないほど不機嫌そうな彼。

まさか、嫌われるようなことをしてしまったのだろうか?


怖い……。

斉野くんには、絶対嫌われたくない……。


そう思ったら、情けないことに足が少し震えてきた。



その時、ずっと黙り込んでいた彼がようやく口を開いた。


「ちょっと、もう一回深呼吸していいか?」

「ん? うん」

思わず〝うん〟と答えてしまったけれど……

深呼吸? もう一回?

あ、もしかしてさっきの溜め息って、深呼吸だったの?


でも、そうだとしたら何故このタイミングで深呼吸?


どうやら怒っている訳ではないみたいだ。だけど、彼の考えていることは未だにわからない。



すると数秒後「……よし。ちょっと後ろ向いて」と言われる。

後ろ向く? なんで? という疑問は飲み込み、とりあえず言われた通りにする。


すると、彼がその場から遠ざかっていく気配がしたのだけれど、そのまま待っていたらすぐにまた戻ってきたのがわかった。


「じゃあ、こっち向いて」

うん、と答えながら振り向くと……


「えっ……?」

眼前に、何本もの真っ赤な赤いバラの花束が見えた。
< 121 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop