おはようからおやすみを笑顔で。
「斉野くん?」

「今の夢は?」

「え?」


普段はクールな表情をほとんど崩さない彼が、この近距離で妙に熱っぽい視線をぶつけてくるから、私の身体に妙な緊張が走る。


「今の夢はもうお嫁さんじゃないの?」

「だっ、だからそんな恥ずかしいこと言わないでっ!」

「なにが恥ずかしいの?」


私の腕を掴む彼の手に、ギュッと力がこもる。

そして、熱い視線を真っ直ぐに私に向けたままーー


「俺は、木本に俺のお嫁さんになってほしいって思うけど」


と突然言われる。

ふざけないでっ、と言いたいけれど……彼とても真剣な瞳で私を見つめているから、きっと冗談なんかじゃないって思った。
私たちが再会してからたった三日目だけれど、斉野くんは私を助けるための嘘はついてくれても、人を傷つけるくだらない嘘をつく人じゃないというのはわかる。


……だからと言って、いきなりそんなこと聞かれても、なんて答えたらいいかわからない!

すると、恥ずかしさで狼狽える私の腕を、斉野くんがグイッと引っ張ってくる。私はそのままバランスを崩し、なんと斉野くんに抱きしめられる体勢となってしまった。


「さっ、ささ、斉野くん……⁉︎」

「木本は、俺の奥さんになるの嫌だ?」

「えっ!」

まさかの質問に、声が裏返る。

嫌、っていうか……そんなことまだ考えられないというか……。

とにかくこの体勢から解放してくれないかな⁉︎ 身体と身体が密着して、ドキドキしてしまう! 心臓の音が斉野くんに聞かれそうで恥ずかしい!


……あれ?

今聞こえる、この激しく脈打つ心臓の音は、私のもの?

私の心臓も同じくらいにドキドキうるさいけれど、これは私の音じゃない。


「……斉野くん」

「なに?」

「もしかして、ドキドキしてる?」

私がそう問うと、斉野くんは特に動揺する様子もなく、それが当たり前かのように、


「そりゃあ、好きな子を抱き締めてるんだからドキドキして当然だろ」


と答えてきた……。
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