おはようからおやすみを笑顔で。
「あの店員さん、さっきからこっちめちゃくちゃ見てません? なんか嫌だなぁ〜」

フォークにくるくるとパスタを巻き付けながらそう言うのは、今日もヘアメイクをバッチリ決めている奈緒ちゃんだ。


……で、こっちを見ている店員さんというのは、凛花ちゃんのこと。こっちを見ている、というか、私を睨んでいるのだ。


ここは、凛花ちゃんが働いているカフェ。
行きたいお店があるからと奈緒ちゃんがお昼に誘ってくれたから一緒にやって来たのだけれど……来るのがこのお店だということがわかっていたなら、断っていたかもしれない。


勿論、せっかく再会した元クラスメイトを拒絶するような真似をしたい訳じゃない。
だけど、あの同窓会からまだ一ヶ月も経っていない。凛花ちゃんと顔を合わせるのはまだ早いんじゃないか……と思っていたのだけれど、案の定、彼女はさっきからずっとレジカウンター越しに私を睨んでいる。


「そう、だねぇ……ハハ……」

「ていうか先輩、ほんとにコーヒーだけでなにも食べない気ですか?」

「なんか食欲がなくて……」

私も相当気まずいけれど、凛花ちゃんは凛花ちゃんで〝こいつなんでまた来たんだ〟と思っているだろう……そう考えると居心地が悪くて仕方がなく、食欲なんて湧いてこない。
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