戦乱恋譚
そう言った声の主は、朧であった。十二代目が消え、名を縛られなくなった彼は、瞳の輝きを取り戻したようだ。
私は、願っても見ない提案に、どくん、と胸が高鳴る。
『そうと決まったら急ぐぞ、姫さん!陽派の廃城が、時空の歪みの中心だ!』
千鶴が、そう言って羽を広げた。それを聞いた花一匁が、ばさり、と着物を翻す。
『…俺が霊力で飛ばしてやろう。姫、準備はいいか。』
不安げな瞳でこちらを見上げる虎太くん。銀次さんと咲夜さんも、ぐったりとした伊織と私を見つめ、頷いた。
パァァァッ!
花一匁の霊力に包まれる。伊織を抱きしめたまま光を感じた瞬間、ぐわん!と視界が揺れた。
何かに吸い込まれる感覚がして、視界が真っ暗になったその時。千鶴の声が響いた。
『姫さん!伊織を頼んだぞ!』
「!」
その言葉が、はっきりと耳に届いた瞬間。
私の意識は、ぷつり、と途切れたのだった。