戦乱恋譚
すると、綾人はそんな佐助の言葉を制して続ける。
「…お前が消えた後、俺は月派を出た。今は本条家も崩壊し、俺にはもう何も残っていない。」
だが、と、綾人は佐助を見つめた。
「もし、お前がまだ、こんな主に付いて来てくれると言うのなら…また、一緒に暮らさないか。」
『!』
「俺の家族は…佐助。お前だけなんだ。」
佐助の瞳から涙がこぼれた。くしゃっ、と顔を歪めた青年は、言葉が出ないように、ぶんぶん、とひたすら首を縦に振っていた。
(…よかった。あの二人が、また会えて。)
十二代目の罠によって引き裂かれた“家族”が、お互いの手を取って笑っている。
すると、咲夜さんが彼らを見ながら口を開いた。
「伊織様。綾人は、これから神城家の使用人に戻らせることにしませんか?一ヶ月前から、屋敷に住まわせていますし。…どうです?」
にこり、と笑って「いいね。それが最善だ。」と答えた伊織は、かつての友とまた暮らせることに喜んでいるようだ。