戦乱恋譚
「華さん。そろそろ二人で抜けましょうか。…このままじゃ、朝まで酔っぱらい達の介抱をすることになりますからね。」
伊織にそう告げられたのは、ちょうど料理を食べ終え、眠くなってきたそんな時だった。
彼に連れられ宴会場を出ると、夜風がふわり、と頰を撫でた。冷たい空気が心地いい。
「…少し、話していきませんか?」
伊織が、離れの前でそう言った。どきり、と胸が鳴る。部屋の中に入ると、二人は並んで畳に腰を下ろした。
ぎこちなく伊織をちらちらと見つめていると、伊織が、ふっ、と笑って私を見つめ返す。
「…華さん、なんか緊張してます?」
「!…え、えっと…。何か話でもあるのかなって思って。」
「え?」
目を丸くする彼に、私はおずおずと答えた。
「だって、伊織が自分から私を引き止めて離れに誘うなんて初めてだから。…まさか、体のこととか、まだ言っていなかったことを話すつもりなんじゃないかと思って…」
すると、伊織は、くすっ、と笑みをこぼす。そして、彼は身構える私に向かって穏やかに告げた。
「大丈夫ですよ。心配しなくても、もう華さんが怖がるようなことは何もないです。…俺が、華さんと二人っきりになりたかっただけなので。」
「え…?」