戦乱恋譚
「…“華”。」
ふいに名前を呼ばれ、彼を見た。二人っきりの時に、たまに出る“素”の伊織。敬語を外した彼は、一瞬だけ私の唇を掠め取った。
不意打ちのキスに目を丸くしていると、熱を帯びた彼の瞳が私をまっすぐ映す。
「…だめだ。俺も触りたい。」
(!)
するり、と頰を撫でた彼の指。後頭部に回された手が、ぐっ、と私を引き寄せる。
甘い予感とともに、伊織がまつげを伏せた。求めるような口づけに、息が上がる。重なった唇の合間から吐息が漏れた。
肩から背中、腰へと滑るように私の体をなぞる伊織の指。くすぐったい、というよりも気持ちいい。完全に頭がぽーっ、としてきた。
酔っているせいか、いつもよりキスが長い。求めるように絡められる舌が熱くて、とろけそうになる。
「…っ、は……」
軽い吐息とともに伊織が離れた。完全に甘い空気に呑まれた私に、彼は耳元で囁く。
「……ごめん、我慢できない。…もっと触っていい…?」
「…!」