戦乱恋譚
彼氏に浮気されて振られたばかりの私に、数時間後、夫が出来るなんて。
いや、これは“良縁”なんかじゃない。むしろ、仮初めの愛など、何も始まっていないに等しいのだ。
「華さん。…嫌ですよね、俺の妻のフリをするなんて…」
(うっ…!)
捨てられた子犬のような表情を浮かべる伊織さん。こんな顔をされて、無慈悲に断るなんて出来ない。
そもそも、私には他に頼るべき家も知り合いもいないのだ。
「…逆に、伊織さんは私でいいんですか?なんか、申し訳ないというか…」
伊織さんは、私には手が届かないほどのイケメンで、物腰柔らかで優しい理想の人だ。それに、由緒ある家の当主となれば、許嫁くらいいてもおかしくない。
すると、伊織さんはにこり、と微笑んで私に答えた。
「華さんは素敵なお方ですから。華さんが引き受けてくださるなら、俺は嬉しいです。」