戦乱恋譚
なんだ、この好待遇は…!どんなホワイト企業よりもホワイトじゃないか。
感動に打ちひしがれていると、わずかにまつげを伏せた彼が、さっきよりも少し低い声でそっ、と告げた。
「んー…、そんなに妻としての仕事をしたいのなら…毎朝口づけの一つでもかわしてみますか?」
「えっ?!!!」
「ふふ、冗談です。」
伊織は、こういう冗談を言う人だったのか。すっかり翻弄されて照れてしまった自分が恥ずかしい。
思わず赤くなった頬を必死に冷ましていると、くすくすと笑った伊織が、立ち上がりながら私に言った。
「俺は女性を愛するフリができるほど器用な方ではないので…華さんも俺には気を遣わずに、ふつうに過ごしてくれればいいですよ。」
彼は、本気にならなければ女性に安易に手を出したりしないタイプ、ということだろうか。確かに、女性から好かれそうな容姿ではあるが、遊んでいるようには見えない。
むしろ、恋愛沙汰には鈍感で、アピールにも気付かなさそうな穏やかな雰囲気を纏っている。