戦乱恋譚
突然背後から声をかけられ、思わず飛び上がる。すると、ひょっこり現れた白髭のお爺さんが、かっかっか、と、笑って私を見上げた。
「すまん、すまん、驚かせたな。わしの部屋の前にいたもんだから、患者かと思ってしまった。」
「は、はぁ…。」
朗らかに笑う彼は、私の顔をみるなり目を見開く。
「これはこれは、伊織殿の奥方ではないか。噂には聞いていますぞ。確か、名前は…」
「!華です。」
「そうそう、華さまじゃ。…まだ挨拶しておらんかったな。わしはこの屋敷に仕える神城家専属の医者、“銀次(ぎんじ)”でございます。」
深々とお辞儀をした彼につられて頭を下げる。
このおじいちゃんは、お医者さんなのか。由緒ある神城家に仕えているということは、かなり優秀な方なのかもしれない。
「華さまは、医務室にご興味が?」
「はい。ここに来る前に看護師…えっと、医者の助手のような仕事をしていまして。」
「ほぉ、それはいい!ぜひ中へどうぞ。狭いですがね。」