戦乱恋譚
「華さん、こっちです。」
物珍しさにきょろきょろしていると、石段の上で伊織が手招きした。小さな鳥居が見える。
しかし、その先にある神社に折り神の気配はなかった。
「いないね…」
ぽつり、と呟くと、伊織は笑みを浮かべたまま答えた。
「他にも神城の領地にはたくさん神社がありますから。そんなに気を落とさないでください。」
彼はそう言ってくれたが、そのあと訪れた神社にも、折り神の姿は見えなかった。神社をまわるうちにだんだんと日が傾き、時刻は午後三時。この時点で、屋敷を出てから四時間が経過していた。
霊力の高い場所にいると踏んで探してはいるが、その推理さえ信用出来なくなってくる。
「…ここもだめですね。華さん、大丈夫です。次に向かいましょう。」
伊織は、折り神を見つけられないごとに表情を曇らせる私を励ますように、明るく言った。その優しさが、心にしみる。
「ごめんね、伊織。付き合わせちゃって。歩きっぱなしで疲れたでしょう?」
「そんなことないですよ。…華さんこそ、大丈夫ですか?」
私が逃したせいで、こうなっているのだ。足を止めている暇などない。
その時、ぽろり、と心の声が漏れた。
「…伊織が顕現出来ていたら、あの折り神はいなくならなかったのかな…」
「…!」