神様には成れない。
本当に独り言なのか、それ以降言葉が続いてこない。
彼は落ち着いているため、すり寄るような仕草をする以外殆ど動きはないが、私はと言えばソワソワと落ち着きがないのでどうしても動きが出てしまう。
至近距離にいる為に、少しの動きでも支障が出てしまうのだ。
「!」
鼻先が微かにぶつかる。
私はそんな接触にすら一々過敏に反応してしまい、早くこの状況から解かれようと言葉の先を促そうとした。
「なんか……何?」
そんな私の心中でも察したとでも言うのか、彼は不意に私から体を離す。
伏せられた瞼が持ち上がるけれど視線は下がったままで、どうやら繋いだ手を見ているようだった。
つぅっと肌をなぞるように人差し指を動かしたかと思えば、ゆっくりと繋いでいた手も解かれた。
「んーん。何でもない」
首を横に振り、私の問いに答える。
何だそれはと困り果てながらも、私は離れてもまだ肌に残る温もりがくすぐったくて誤魔化す様に軽口を口走る。
「淵くんってよく分からない人だね」
「え~~?じゃあ、瀬戸さんは予測不能な人だよね」
彼はいつものようにクスクスと笑っていて、私もつられるように笑ってしまう。
言い返す様に軽口が飛んで来たことに私は内心ホッとしていたのだった。