神様には成れない。
目を固く閉じていれば、するりと指の先が耳の裏に触れた。
そのまま耳朶を指で挟むかのような変な感覚が伝わって来る。
「はい。もういいよ、目開けて」
それもほんの一瞬の事で、また彼の軽い口調が耳に届く。
それを合図に目を薄く開ければ用は済んだとばかりに、彼は向かいの席に戻った。
「??」
状況の理解が追い付かず放心状態に近い私は、パチパチと瞬きをするばかりで、それでも彼が私から離れた事によりゆっくりと心音は元に戻っていく。
次いで気づくのは髪が耳に掛けられている事で、耳に空気が触れている事。
「っ~~!っ!?」
慌ててバッと耳を塞ぐように手を当てれば、手に触れる無機物がいつもとは違う事に気づく。
鞄から鏡を取り出して確認すれば、やはり私がいつもつけていたピアスとは違う物になっていた。
「こ、これ……」
「俺からプレゼント。瀬戸さん何でも似合うねぇ」
困惑する私に返ってくるのは満足そうな言葉で、彼が何をしたか理解する。
「何で……」
それだけを口に出すのがやっとだった。
だって彼には服も貰ってしまっている。それをまたこうやって渡されるだなんて思いもしない。
「何で?んん〜〜、瀬戸さんに似合いそうだなぁって思ったのと、大学頑張る願掛けにしたって話。あれ前向きで斬新で好きだから、俺からも頑張ってって意味で。とか?」
冗談めかして言った後に、「それと」と付け加えて言う。
「――……瀬戸さんの事好きだよって意味で?」
何だそれは。と言いたくなるのに不意の告白に言葉が引っ込んでしまう。
次いで彼は目を伏せがちにして私から逸らした。
「――ほら、俺って多分分かりにくい奴だから」