Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
千紗子は両目を見開いて雨宮を見続ける。
(なんで……)
千紗子はそんな意味で誘ったわけではない。
敏い雨宮がそれを分からないはずがないのに……。
雨宮はまるで自分自身のことなんかどうでもいいみたいに扱っている。食事も睡眠も。
千紗子はどうしてもそのことが気になってしまうのだ。
睡眠に関しては圧倒的に千紗子のせいなのだけれど、どうせお互いが寝る場所を譲り合ってしまうくらいなら、一緒のベッドで譲り合えばいいのでは、と思っただけなのだ。幸い雨宮のベッドはダブルでサイズで、二人がくっつかなくても充分眠れるはずなのだから。
(く、くやしい……)
迷惑を掛けているのは確かに自分なのだけど、こんな風に勘違いされた上に蹂躙されるのは我慢がならない。
千紗子はお腹の底から沸々と何かが湧き出るのを感じた。
「うそ、だったんですか…?」
絞り出した声が震えている。
一言ずつハッキリと発した千紗子の声は、小さいながらも雨宮の耳にきちんと届いた。
雨宮が眉間に皺を寄せて、目を細める。
「私の好きにしていい、って。嫌なら触れない、って、言ったのに……。」
言いながらじわじわと瞼が熱くなっていく。
「私は雨宮さんがここで寝るのが嫌なんです。触れない、て言ってくれたのを信じてるから、同じベッドでも寝ればいいかも、て……。」
熱くなった瞳からポロポロと滴がこぼれ落ちていく。
「千紗子……」
雨宮の声からは、さっきまでの険が取れて、逆に弱ったふうに聞こえる。
「ううっ、ひっく…」
しゃくり上げて泣き出した千紗子の肩に、雨宮の手が触れる。
その手は壊れ物を扱うように、そっと、おそるおそる千紗子を抱き寄せた。