Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
「俺は壁側で寝るから、千紗子は手前な。」
掛け布団をめくると、雨宮はベッドの奥側に入る。
千紗子が躊躇していると、雨宮は自分の隣をポンポンと叩いて彼女を促した。
「ほら、千紗子。そこは寒いから早くおいで。」
千紗子は緊張しながらも、ゆっくりとベッドの中に入った。
「じゃあ、電気を消すぞ。おやすみ、千紗子。」
「…おやすみなさい。」
電気が消されて部屋が真っ暗になる。雨宮は常夜灯は点けないタイプらしい。
千紗子は雨宮に背を向け体を少し丸めた状態で横になっている。極力端っこに寄っているし、幅の広いベッドなので、雨宮と体が触れ合うことはない。
けれど、手が届く距離で彼が寝ていると思うと、どうしても体が硬くなってしまう。
(眠ることなんて、出来そうにないわ…)
千紗子は暗闇を見つめながら、身じろぎ一つせずに息を詰めていた。
(明後日までなんて、無理かもしれない…。雨宮さんにも無理をさせているもの。なるべく早くここを出ていこう。)
なるべく早く雨宮を自分から解放したい。
それにはまず、自分がここから出て行かなければならないのだ。
(新しく住むところも、早く探さないと……)
千紗子は胸の前で右手を固く握りしめた。