Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

 「眠れないのか?」

 突然低い声が背中から聞こえた。

 「…はい。雨宮さんも?」

 「ははっ、そうだな。」

 「すみません……」

 この状況を作ったのは自分自身なのだから、自分が眠れないのは仕方ない、と千紗子は思っていた。
 けれど、雨宮まで眠れないのでは、何のために『一緒のベッドで』と誘ったのか分からない。

 「眠くなるまで、少し話でもしようか。」

 「はい。」

 千紗子が返事をすると、布団がもぞもぞと動いて、次の瞬間、千紗子は背中から雨宮の体に包みこまれた。

 千紗子がハッと息を呑む音が、暗闇に響く。

 体の後ろに熱の塊を感じた瞬間、千紗子の頭が真っ白になった。

 「そんなに端っこにいたら、落っこちるぞ。」

 雨宮は千紗子の動揺なんてお構いなしに、彼女を自分の方へ引き寄せる。

 千紗子の鼓動が一気に加速して、体中がカーッと熱くなる。
 さっきまで以上に固まった千紗子の体を、雨宮の両腕が柔らかく包み込んでいる。

 「離れてても眠れないなら、くっ付いていた方がいいだろう?その方が温かいし、話しやすいしな。」

 雨宮の変な理屈に返す言葉も、今の千紗子には見付からない。
< 138 / 318 >

この作品をシェア

pagetop