Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

 「俺の前では自分を隠さないで、千紗子。」

 眼鏡の奥の瞳が優しく細められる。
 ただ自分の鼓動が早くなっていく音を耳に、千紗子は何も考えられなくなった。

 「さっき。」

 「え?」

 「さっき何か言いかけただろ?」

 「さっき……あっ!」

 「言ってごらん。どんな些細なことでもいいから。千紗子の想いをちゃんと聴かせて。」
 
 千紗子を見下ろす瞳が甘く優しい。どんなことでも否定せずに受け入れてくれそうな雨宮の瞳に、千紗子は胸の内にくすぶっていた気持ちを思い出した。

 「お弁当…のこと、なんですが……」

 「うん。」

 「あの……他の方が、見てたみたいで……」

 「ん?俺の、ってこと?」

 キョトン、と目を丸くして少しだけ首を傾げた雨宮の姿が、何だか可愛らしく見えて、千紗子は「ふっ」と息を吐いた。

 「はい。雨宮さんが初めて『手作り弁当』を持ってきてた、って話題になってまして…それが彼女だとか婚約者だとか、勝手な噂が飛び交っているんです。」

 「ああ、そういうことか。」

 「はい…。なので他の方に誤解を招いてしまって申し訳ないので、お弁当はやっぱり…」

 「別に構わない。」

 「えっ?」

 「構わない、って言ったんだ。」

 千紗子は唖然とした顔で雨宮を見上げた。彼は憮然とした表情で千紗子を見下ろしている。
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