Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

 『お弁当はやっぱり作らない方がいいですよね?』

 千紗子はそう聞くつもりだった。
 けれど、彼女の言葉を遮った雨宮は、キッパリと断言した。

 「俺はそんなどうでもいい噂話よりも、千紗子の弁当の方がいい。」

 雨宮は真剣な瞳でそう言ってから、ニッコリと笑う。

 「それに俺としては全然構わないよ、『彼女』でも『婚約者』でも。」

 「えぇっ!?」

 雨宮の発言に驚く千紗子とは正反対に、彼は飄々と言葉を続ける。

 「俺としてはそうだといい、と思ってるくらいだし。…ああ、もし誰かに聞かれたら『恋人の手作り』だって答えておくよ。」

 「だ、ダメですっ!」

 「なんで?俺が勝手にそう言うくらいいいだろ?」

 「ダメですっ!!」

 赤くなった頬を膨らませた千紗子は、必死のあまり自分の前で両手をパタパタと振る。
 そんな千紗子の慌て振りを見下ろしながら、雨宮はクスッと笑う。

 「仕方ないな。千紗子がそこまで言うならそれはやめておこう。」

 雨宮の言葉に、千紗子はホッと肩を撫で下ろす。
 けれど、楽しげに微笑む雨宮を見ているうちに、段々と千紗子の胸にモヤモヤとしたのものが湧き上がってきた。

 (私が昼間どれだけハラハラしたのか、雨宮さんは全然知らないからっ!!)

 その時のことを思い返すと未だに背筋が凍るのに、当の本人である雨宮は、目の前で楽しげに笑っている。
 そのことが正直、千紗子は面白くなかった。
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