Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

 雨宮に組み伏せられた千紗子は、為すがままで、抗うことすら思いつきもしなかった。
 ただ雨宮から与えられる熱情と快感に流されながら、散々乱され啼かされ続けるだけ。
 その大きな体に必死にしがみ付いて激しく揺さぶられ続けた千紗子は、幾度となく絶頂から突き落とされ、最後の方の記憶は途切れてしまっていた。

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 千紗子を抱きしめながら眠っている雨宮と素肌が触れ合う。
 あの夜、決して自分の衣服を脱ぐことのなかった彼の素肌は、滑らかなのに固くたくましいことを自分は知ってしまったのだ。

 (わたしっ、なんてことを……!)

 数時間前の出来事をハッキリと覚えている千紗子は、ベッドの中で慌てふためいた。
 
 恋人でもない男性と肌を重ねることが、自分の人生に起こるなんて。
 
 雨宮が自分に好意を持っていることは分かっていた。
 けれど彼はいつでも紳士的で、一緒に暮らしていても千紗子の嫌がることはしなかった。それどころか、千紗子が警戒心を表に出す前に彼の方が一歩下がって距離を取っていたので、千紗子の緊張はいつしか緩んでしまっていたのだ。

 (なんて軽率なことを!雨宮さんの好意に応えることなんて、私には出来ないのに……)

 あまりの不甲斐なさに両目に涙が溢れだす。けれど、今は泣いている場合ではない。

 千紗子の体に腕を巻き付けたまま、雨宮は良く眠っている。眼鏡がないせいかいつもより若く見える。閉じた瞳に並ぶ睫毛は、千紗子よりも長いかもしれない。 

 千紗子は眠っている雨宮を起こさないように細心の注意を払いながら、そっとベッドを抜け出した。

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