Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

 けれど、蓋を開けて見れば、このざまだ。

 長い間玄関にうずくまっていた千紗子の体は、コートを着ていてもずいぶんと冷えていた。

 緩慢な動きで靴を脱ぎ、よたよたと部屋の中に入る。
 小さなキッチンの横の引き戸を開くと、シングルベッドと小さなデスクが置いてある六畳ほどの部屋がある。千紗子はエアコンのスイッチを入れた後、カーテンをそっと開いた。

 東側から朝陽が差し込んで来る。
 エアコンからの温風と微かに当たる日の光が、千紗子の冷たい指先をそっと温めた。

 (明日からどんな顔をして、仕事に行けばいいの………)

 千紗子の心は沈んでいく。

 (どうして拒否できなかったの…逃げ出してしまえばよかったのに。)

 雨宮は力に物を言わせて、千紗子を抑え込んだわけでも縛り付けたわけでもない。
 千紗子が嫌がることを無理矢理、ということも一つもなかった。

 酔っていたわけでも、自暴自棄になっていたわけでもない為、昨夜のことを千紗子はしっかりと思い返すことが出来てしまう。

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