Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
逃げるように雨宮のマンションを出て、この部屋で暮らすようになってから、千紗子はうまく眠ることが出来なくなっていた。
最初、なかなか寝付けないのは一人きりの生活が久しぶりのせいかと思っていた。
体は仕事で疲れているのに寝付けず、寝付いても眠りが浅いせいか夢ばかりを見る。しかもその殆どが今の夢なのだ。
夢から目覚めるた千紗子の頬には涙で濡れている。
夜明けまでの時間は十分に残っているのに、もう一度眠りに戻るのが怖くて、結局ベッドの中でまんじりともせずにうずくまっているのだった。
(あれからまだ一週間しか経ってないなんて、嘘みたい……もう何か月も前のことみたいに思えるわ……)
腕で抱えた膝の上に額を乗せて、千紗子は考える。
(もう大丈夫、って思ってたのに……)
思うようにいかない自分の体が情けなくなる。
こんなことくらい、すぐに吹っ切ってしまえる強さを身に着けたい。
(……早く慣れなくちゃ、ね。)
暗い部屋に帰ること。自分の分だけの食事作り。
小さなベッドで一人きりで眠る寒い夜にも。
膝の上の布団に、小さな水滴が染みを作った。