Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
「雨宮さん、ご馳走様でした。」
直前に千紗子と美香が化粧室に行っているうちに、雨宮が支払いを済ませていた。
もちろん、二人ともきちんと代金を払うと言ったけれど、彼は微笑みながらやんわりと、でも断固として受け取らなかった。
「雨宮さんをお誘いして、返ってご馳走になってしまってすみません。」
美香が心底申し訳なさそうに謝る。
「そんなこと気にしなくていい。普段は聞けない二人の話が聞けて、俺も楽しかったよ。良い時間をありがとう。」
少し微笑んだ彼からは、いつもの爽やかさに色気もプラスアルファされて破壊力抜群だ。
漏れ出る色香は、雨宮にアルコールが入っているせいなのか、それともほろ酔いの千紗子の瞳にそう映るのか。
美香曰くの『無自覚の美男子』威力にやられないようにしなければ、とぼんやりと考えながら、再度雨宮にお礼を言って店を出た。
店から駅へと向かう途中で、美香はタクシーを拾って恋人の元へと向かった。
美香を見送った後、千紗子は自分と雨宮だけ、という状況に気付いた途端、再び居心地の悪いようなそわそわとした気持ちになって、彼の少し後ろを黙ってついて歩いた。