Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
運転中の一彰の横顔を覗き見る。
(荷物の運び出しのことも、一彰さんが手伝うって言ってくれたからすぐに行動に移せたのだし、いつもいつも優しくて、私のことをこんなにも大事にしてくれてるのに、どうして私はこんなに不安になるの……)
裕也とも、これで完全に決別したと言える。
一彰の自分に対する気持ちを疑っているわけではない。
(じゃあ、どうして……)
そんなことを考えながら車窓から外を眺めると、車が向かっているのが帰る方向とは違うことに気付く。
「あれ?まだどこか行くんですか?」
右側を向いて問うと、運転中の一彰はまっすぐす前を向いたまま応える。
「ああ。昼を食べて少し買い物をしてから帰ろうかと思って。」
車のデジタル時計は【11:46】と表示している。
(もうこんな時間だったんだ…)
元恋人と暮らした部屋に、今の恋人を連れて入ることに、やっぱり少しだけ気を張っていたのかもしれない。もう昼時だというのに、千紗子は全然空腹を感じていなかった。
「ちぃはそれでもいいか?疲れてるなら、何か食べるものを買って帰ってもいいけど?」
「全然疲れてませんよ。私も久々のランチ、楽しみです。」
「良かった。もう着くから何が食べたいか考えておいて。」
「はい。」
千紗子が短い返事を返すと、一彰はウィンカーを出して、滑らかに車を左折させた。