Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
「でも良かったわ、千紗ちゃん。」
「え?」
「一時期は本当に見ていられないくらい辛そうだったもの。これでも心配してたのよ、私。」
さっきまでのからかい半分の声色とは真逆の、心底気遣ってくれる優しい声に、千紗子は下げていた顔を上げた。
「でも、もう大丈夫そうね。ここ一週間くらいは顔色も良いし明るい笑顔も見れるようになったしね。」
そう言って美香はにっこりと笑う。
その笑顔を見た時、自分が思っているよりも何倍もこの先輩は自分のことを気に掛けていてくれてるのだ、と千紗子は気が付いた。
「美香さん……ありがとうございます。」
小さな声でお礼を言うと、美香は千紗子に顔を寄せてくる。
「今日だって、この後デートなんでしょ?」
小さく囁かれたその言葉に、千紗子は思いっきり動揺した。
「な、なんでそれを……」
「千紗ちゃんの顔を見てれば分かるわよ。朝からいつにもまして千紗ちゃんのまわりがほんわか明るいもの。」
「ほんわか……。」
千紗子には良く分からない理由だけれど、美香の言うことは事実だ。早番の仕事が終わった後、一彰とは待ち合わせの約束がある。
頬を赤くした千紗子に、美香は「うふふ」といたずらな顔で笑ってから、「今度また飲みに行きましょう。その時色々聞かせてね」と耳元で囁いた。