Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
「千紗子の髪、濡れてるぞ。」
「はっ、はい。」
突然、それまでとは全然違う話を振られて、千紗子は動揺した。
確かに、シャワーを浴びた後、タオルで拭いただけの千紗子の髪は、まだしっとりとしていて乾いていない。
けれど、まださっきの雨宮の問いかけの答えが出ていない千紗子は、そのことばかりに思考を捕られて正直髪のことなんてどうでも良かった。
けれど雨宮は、千紗子の髪を撫でながらブツブツと不満げに言う。
「ちゃんと乾かさないと風邪引くぞ。唯でさえ今の君はあまり心身万全とは言えない。」
「えっと…はい、すみません。」
今朝からずっと心配をかけっぱなしの千紗子は、なんとなく体が小さくなる。
「ドライヤー持ってくるからちょっと待ってて。」
そう言って千紗子を囲っていた腕を離した雨宮は、おもむろに立ち上がり廊下の方へ歩いて行った。
(雨宮さんが、私のことを好き…?
どうして私は彼に触れられて嫌じゃない…?)
困惑した千紗子の頭は、雨宮の言動ですっかり忙しい。
そうやって、アレコレ考えているとすぐに雨宮がリビングに戻ってきた。
「ほら、頭出して。」
そう言った雨宮の手にはドライヤーが握られている。
「えっ!?あの、自分で出来ますからっ」
「いいから。やらせて、ね?」
おねだりするみたいに首を傾げて見下ろしてくる雨宮に、千紗子の心臓がドキンと跳ねた。
見たこともない雨宮の仕草にすっかり心を乱された千紗子が、口をパクパクしていると、返事を聞くつもりなんてない雨宮は、勝手に彼女の髪にドライヤーの風を当て始めた。