Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

 歩き出した雨宮の背中が小刻みに震えている。

 (またからかわれたの!?)

 雨宮が笑っていることにすぐに気付いた千紗子は、彼を追いながらその背を恨めし気な目つきで眺めた。

 (雨宮さんの素顔って掴めないわ…)

 心配そうに世話を焼いてきたり、甘い瞳で見つめてたと思ったら、からかわれたり。

 そんな雨宮に振り回されっぱなしの千紗子だけれど、何故かそれを嫌だと思わない自分がいる。

 (ずいぶんお世話になってるもの…)

 甘やかされて、それに慣れてきたのかも、そう思いながら足元を見ていると、目の前の雨宮が急に足を止めた。

 「どうしたんですか?」
 
 「これ、千紗子に似合いそうだ。」

 雨宮が足を止めたのは、レディースファッションのお店の前だった。
 目の前には、ワンピースを着たマネキンが立っている。
 柔らかな生成りの白一色のそのワンピースは、ふんわりと広がった膝下までのフレアスカートがロマンチックなデザインで、とても可愛らしい。

 昨夜玄関に転がっていたピンク色のハイヒールを思い出す。

 (私が、これが似合うような可愛げのある女の子だったら、裕也はあんなことしなかったのかな…)

 ワンピースを見上げながらほの暗い考えがよぎって、胸が苦しくなる。

 「どうした?具合が悪くなったか?」
 
 千紗子はハッとした。

 (また雨宮さんに心配をかけてしまうわ!)

 千紗子が慌てて首を振ると、雨宮は「なら良かった。」と眉を下げた。
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