Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
 「千紗子は何か欲しいものや見たいものはあるか?」

 「欲しいもの…。」

 歩きながら雨宮に問われて、千紗子は考えた。

 (ホテルに泊まる為に必要なのは下着くらいかしら…。出来たらここで買っておきたいけれど、流石に雨宮さんと一緒じゃ……)

 顎に手を当てて考え込む千紗子を見た雨宮が提案する。

 「俺もちょっと用事があるから、少しの間別々にしようか。そうだな…十一時にそこのコーヒーショップで待ち合わせでどうだ?」

 雨宮が指差した先には、よく見るチェーンのコーヒーショップがある。

 「何かあったら携帯に連絡して。間違っても一人でどっかに行くなよ。もしそんなことしたら迷子放送、掛けてもらうからな。」

 「迷子放送……」

 「ああ。『迷子の千紗子ちゃんを探してます』って放送してもらうよ。」

 「や、やめてください…」

 想像しただけで背筋が凍るくらい恥ずかしい。

 「じゃあ、勝手にいなくなったりしないこと。時間に遅れる分は構わないから、その時は連絡して。」

 「……はい。」

 千紗子が渋々頷くと、「ヨシ。」と言った雨宮が、悪戯が成功した時の少年みたいな顔で笑った。
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