Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
書店に入ると、雑誌のコーナーが目に付いた。
(クリスマス特集…)
地元エリアのクリスマスイベントやイルミネーション、おすすめのレストランを特集したカップル向けの雑誌が並んでいる。
(もうあと二十日くらいでクリスマスだものね…そう言えば、今年は裕也からクリスマスの予定なんて聞かれて無かったわ……)
プロポーズされて初めてのクリスマスなのに、自分たちはそんな話しすらしていなかったのだと今更気付く。
(お互いの実家への挨拶に行くのも、具体的に何も話してなかったし…)
プロポーズを受けてすぐの頃、実家への挨拶は年末年始の頃にしようか、という話が出ていた。
けれど、そのあとお互い忙しくなって休みもほとんど合わなかったので、具体的に話が進まなかったのだ。
(でも本当はそうじゃなかったのかも…、私が「いつにする?」って聞いてみた時に「今は忙しいから」ってはぐらかされてばかりだったわね…)
忙しくて帰りの遅い裕也を煩わせたくなかった千紗子は、『それなら仕方ない。もう少し後になってからでいいか』とあまり口に出さないようになったのだった。
(今思えば、裕也は結婚に前向きじゃなくなってたのかも。いいえ…結婚じゃなくて、私のことに……)
下に並んだクリスマスツリーがぼやけてくる。
(こんなところで泣いたらダメ…)
奥歯を食いしばって、涙を堪えた。
まばたきを我慢して、目に張った涙が渇いてホッとした、その時。
千紗子はいきなり後ろから腕を掴まれ、勢いよく引っ張られた。