Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~


 雨宮の申し出を受けた後、二人は早めの夕飯を食べることにした。
 朝食べたたった一つのレーズンパンも、そのあとマンションで吐き戻してしまってから、千紗子は飲み物しか口にしていなかった。
 「食べれるなら食べた方がいい。」という雨宮が千紗子に用意してくれたのは、レトルトのお粥だった。

 
 「こんなものしか用意できなくてすまない…。何か胃に優しい食べ物を、と思ったんだが、俺にはそれを作る技術がなくてな…」

 テーブルの向かいに座った雨宮が申し訳なさそうにそう言う。

 「いえ、そんな…。私の食事のことを気遣って下さって、ありがとうございます。」

 正直今の千紗子には、肉体的にも精神的にも普通の食事は喉に通りそうにない。温かくてとろとろのお粥は飲みこみやすくて、少しずつだけれど食べ進めることが出来る。
 
 「このお粥、もしかしてわざわざ買ってきてくださったんですか?」

 「いや、わざわざというわけじゃない。ショッピングモールで千紗子と別れた後、食品売り場に用事が有ったから、ついでに買ってみたんだ。」

 「そうだったんですね…。ありがとうございます。」

 あんな時から自分の食事のことを考えてくれていたのか、と思うと千紗子は胸がほんわかと温かくなるのを感じた。
 たとえ温めるだけのレトルトの食事でも、自分の為を思って用意してくれたものが、どんなに美味しいものなのかを知る。
 雨宮の用意したお粥は、千紗子の体も心もじんわりと温めてくれた。
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