24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
粒よりのあんで包まれたおはぎに、黒文字を差してひと口ぶんに切る。そして、大口を開けて空気まで食べるように頬張れば、優しい甘みで満たされた。
「おいし……。最高に美味しい」
相手もいないのに呟けば、ますます悲しくなる。
もごもごしながら、伊鈴は涙をこらえた。
(なんでこんな誕生日を過ごさなくちゃいけないのよ。私がなにをしたって言うの!?)
ずっと気を張っていたせいで、緩む涙腺を抑えきれなかった。
ぽろぽろとこぼれる涙は、黒い折皿に模様をつけていく。甘かったはずのおはぎが少ししょっぱくなって、伊鈴は我慢することを諦めた。
カップルに変な客だと思われてもいい。
お店に迷惑だと言われたら、すぐに出ていこうと思う。
でも、今だけ。ほんの少しでいいから、悲しみから逃れたい。
誰にも咎められずに、今日をやりすごしたい。
伊鈴は鼻をすすりながらおはぎを少しずつ食べ進め、ほろ苦い抹茶でふっと息をついた。