24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
黒艶の折皿に、おはぎとカステラが乗せられた。そして、淹れたての抹茶の香りに凛とした気持ちになる。
「お席までお持ちします。どうぞこちらへ」
お盆を持った店員の案内で右手へ進むと、砂壁の向こうには五組分の小さなテーブル席があった。
(うっ……まさか、ここにもいるとは)
和菓子店にカップルはいないだろうと思っていたのに、なんともラブラブな一組が二席向こうに座っている。
今の伊鈴にとって、見知らぬ恋人の姿はなによりも見たくないものだった。
(他の席なんてないし、今さら持ち帰りなんて言いにくいし……)
内心迷っているなんて気づくはずもなく、店員が二人掛けの真四角のテーブルに折皿を置き、一礼して去っていった。
「この後、どうする?」
「お酒飲みたいなぁ」
(……羨ましい)
もちろんカップルがなにを話そうと自由で、伊鈴もそれを聞いているつもりはないのだけど、BGMのジャズが微かに聞こえる程度の店内では、嫌でも耳に入る。
そして、誕生日をひとりで過ごしていることが、惨めになった。