24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
(帰りたくないなぁ。どこかに寄って、軽く飲んでいこうかな……)
自宅の近くにある居酒屋でもいいかと考えていると、立花が歩きだしたので伊鈴も続く。
行きと同じように、彼は車道側を歩き、酔っ払いが向かい側からやってくると、一歩前に出て守ってくれているように感じた。
(そんなわけないか。ただの客にそこまでする必要はないだろうし。立花さんが紳士的なだけ)
なにげない立花の男らしさに、つい頼りたくなる。
特にこんな日は、気が済むまで寄りかかるのを許してくれる相手が欲しくなるものだ。
伊鈴は、ますます自宅にまっすぐ帰るのが嫌になってきた。
「十河さん」
「はい」
「ご自宅はどちらですか?」
「茗荷谷(みょうがだに)です」
銀座からは丸ノ内線で六駅。職場のある虎ノ門へも、銀座で乗り換えて一駅なので利便がいい。だけど、今夜ほど帰りたくないと思ったことはなく、その六駅分の距離も億劫に感じる。