24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
「おいくらですか?」
女将が持ってきた伝票を確認する立花に、すかさず声をかける。
好きなものを食べていいと言われたものの、さすがに初対面でご馳走になるわけにはいかない。
「結構ですよ。今日は私がお誘いしましたので。女将さん、これでお願いします」
さっさと黒いカードで会計を済ませてしまった立花に、伊鈴はもう一度頭を下げた。
席を立ち、女将に見送られて店を出る。
「ご馳走様でした。とても美味しくて、つい箸が進んでしまいました。本当にすみません」
店前の道路で立ち止まり、手のひらを上に向けながら空を仰ぐ立花にお礼を告げた。
「謝ることではないですよ。喜んでいただけたら十分です。……雨、止みましたね」
「……そうですね」
これなら銀座駅まで歩いていけるし、終電にもまだ余裕があるので間違いなく自宅に帰れそうだ。
でも、帰ってひとりになったら、きっと泣いてしまうだろう。拓也との思い出が、そこかしこにあるのだから。