24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~

「水、飲む?」
「はい」

 ゆっくりと上体を起こそうとすると、立花が背中を支えてくれた。
 ペットボトルの水を三口ほど飲めば、久しぶりに酔ってしまった身体に染み渡る。


「すみません、ご迷惑をおかけしました」
「そんなこと思ってないよ。十河さんが少しでも気晴らしになったなら、それでいい」

 立花は窓際に置かれたテーブルセットに座り、同じように水を飲んでいる。
 少し冷静になろうと、伊鈴は室内を見渡した。

 ここは間違いなくベッドルームだろう。しかも、これは間違いなくキングサイズだ。
 そして、とても明るいドアの向こうには、リビングがあるのだと想像できる。

(1時か……終電逃しちゃったな)

 このままでは必然的に一夜を共にすることになると、お酒が残った頭でもすんなりと理解できた。

(立花さんのことが信じられないわけじゃないけど、やっぱり……)

 男女間の一線を越えなくとも、失恋した日に他の男性と過ごすのは、どうしても気が引けてしまう。
 伊鈴のなかの常識では、そんな女はろくな恋ができないと思っているからだ。

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