24時間の独占欲~次期社長が離してくれません~
「今日、雨がやむまで、十河さんの時間をください」
「……それは、どういう」
「デート、してくれないかなって」
突然のことに、伊鈴は表情も身体も固めたまま、動けなくなった。
(私が、立花さんと……デートっ!?)
数秒考えて目を丸くすると、立花は伊鈴を見て、にこにこと優しく微笑む。
「誕生日が嫌いだなんて言えなくなるような時間、過ごしてみたいでしょ?」
「えっ、なんでそれを知ってるんですか!?」
誕生日に振られたなんて、話した覚えはないのに……。
酔った勢いで言ったのだとしたら、本当に申し訳なさすぎる。これ以上、立花に気を使わせたくないのだ。
「言っておくけど、気を使ってるわけじゃないからね。いい? 俺が、君と、デートをしたいんだ」
強調して区切りながら、立花が言う。
そして、ソファから腰を上げ、事の成り行きについていけない伊鈴の手を取って立ち上がらせた。
「で、でもっ……」
「早く出かける支度をしておいで。1日遅くなったけど、素敵な誕生日にしよう」
有無を言わせぬ立花の優しさに流されるように、伊鈴は再び洗面室に押し込まれた。