略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
優しい口唇の感触に、心が満たされる。
好きなのだ、匠海のことが。
彼の言葉のひとつひとつが、全て美郷のためにあるとわかるから。
本当は催眠術だなんて思ってない。
匠海の真摯な想いに、美郷の心が共鳴していることをわかっていた。
「匠海さんは、陽翔さんのことよくご存じなんですか?」
そっと口唇が離されてから、美郷はふと沸いた疑問を零した。
匠海から問われたことにすぐに答えられなくて誤魔化したかったというのもある。
姉の恋人を『あいつ』と言うくらいの近しいらしい間柄は気になるところだった。
「ああ、そうか。美郷も知らないんだな、俺の家系のこと。まあ知ってるやつのほうが少ないけど。
財閥の血筋だと、周りは色眼鏡で見てくるからな。美郷もそういう気持ちはわかるだろう?」
「え……?」
「大手銀行頭取の孫っていうだけで、周りは美郷のこと“お嬢様”だなんだって言ってこなかったか?」
たしかにそうだ。
だから婚約のことも、腰掛けだと思われたくなくて隠してきた。