略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~
 あのときも、匠海にお茶を出した時だった。

 業務中だったからなのか、匠海は動揺も悲愴も見せなかった。

 それどころか、心の芯が通ったあの真っ直ぐな瞳で美郷を貫いてきた。


 ――――『それでも俺は君を奪うつもりでいるから』


 それまで事務的に告白をかわしてきた美郷だったけれど、あれにはさすがに全身を赤らめずにはいられなかった。

 まるで“覚悟して”とでも宣言されたようだった。

 穴という穴から羞恥が噴き出すようで、居ても立ってもいられず、そのまま女子トイレに飛び込んだことは今でも忘れられない。

 いや、忘れられないのは、匠海のあの心を突き刺す眼差しの方だ。

 どうしたって、匠海と付き合うことはありえないのに、彼はそれを覆そうとする。

 あの強い意志で。

 美郷はもう一度深呼吸をして、匠海の眼差しを頭から追い出す。

 そんなことをされても、美郷としては困るのだ。

 おそらくもう間もなく、結納の日程が決まるはずだ。

 そうすれば当初の予定通り、美郷は無事にU&Kホールディングスの御曹司の元へと嫁ぐことになる。

 ……はずだ。
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