略奪宣言~エリート御曹司に溺愛されました~

「失礼します」


 鮮やかな緑色のお茶を匠海の前に出すと、ふっと顔を上げてくる彼は「ありがとう」と一言だけをくれて、すぐに元の話へと戻ってしまう。

 昨夜電話で話していた匠海とは、別人のようだ。

 お盆を抱え頭を下げてその場から離れる。

 まさか、佐藤代理と仕事の話をしている最中に、いつもの軽口が出てくるわけがない。

 いつだって真剣に成京銀行と取引に来ているのだから、当たり前だ。

 それなのに、なぜだか今日に限って、ほんの少し淋しさを感じてしまった。

 一体何が、美郷にそんな感情を持たせたのか。

 自分でもわからないまま自席に戻り、日々絶えることのない書類の整理に没頭した。



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