【短】あなたが優しく笑うから、心が激しく波打った。
「ありす、聞いてるの?」
前にいたクラスメイトの声で我に返る。
いつの間にか担任がいなくなって、教室内がザワザワとうるさくなっていた。
「ごめん、考え事してて」
そう言ったら、窓際の方から声をかけられた。
「ありす! 今のうちに連絡先!!」
約束したことを思い出して立ち上がる。
あまり使わないスマホは、買ってから一年経つのに新品みたい。
だけど、やっと使う時が来たんだって思うと嬉しい。
私が歩きかけた時、誰かに腕を掴まれる。
「え?」
振り返って、背の高い彼の顔が視界に入る。
ドクンと心が跳ねる。沈んでいた心が持ち上げられて、あっという間に海面まできてしまう。