【短】あなたが優しく笑うから、心が激しく波打った。


「ありす、聞いてるの?」



 前にいたクラスメイトの声で我に返る。

 いつの間にか担任がいなくなって、教室内がザワザワとうるさくなっていた。



「ごめん、考え事してて」



 そう言ったら、窓際の方から声をかけられた。



「ありす! 今のうちに連絡先!!」



 約束したことを思い出して立ち上がる。
 あまり使わないスマホは、買ってから一年経つのに新品みたい。
 だけど、やっと使う時が来たんだって思うと嬉しい。

 私が歩きかけた時、誰かに腕を掴まれる。



「え?」



 振り返って、背の高い彼の顔が視界に入る。

 ドクンと心が跳ねる。沈んでいた心が持ち上げられて、あっという間に海面まできてしまう。

< 19 / 25 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop