【短】あなたが優しく笑うから、心が激しく波打った。
「約束、覚えてる?」
彼はスマホを私に見せて優しく笑う。その笑顔があの日と重なる。
金髪はなくなっていて、黒髪になっていたけど確かに彼だ。
青い空の下で、波の音を聞きながら話したこと。全部思い出されて、急な感情に翻弄されていく。
「今度は、学校の中を案内してくれる?」
まただ。他にも話しやすい人はいる。それなのに、至は私だけを見る。
「どうして至が、いるの?」
それを言うのがやっとで、混乱した頭を整理する時間は全くない。至はあきれたような顔をして、黒板を指さす。
「俺、転校生。さっき紹介されたんだけど聞いてなかった?」
「……全く」
「冷たいの」
改めて見た黒板には至の名前。それでやっと私は理解し始める。
「運命とか、奇跡とか、信じてみたいって思わない?」
「……うん」
至はまだ私を離してくれない。