【医者恋シリーズ3】エリート外科医の蜜甘求愛
嘘……誰か、嘘だと言って。
恐る恐る首を捻り、覚悟を決めて背後の光景を目にする。
そこにあった端正な顔に、息が止まりかけた。
ふわふわとした意識の中で見た、艶っぽい表情がフラッシュバックする。
やってしまった……色んな意味でやってしまった……。
そろりと顔を元の位置に戻して、ひとまず落ち着こうと深呼吸する。
そのせいでお腹が動いたからか、巻き付いている腕が私の身体を抱き直す。
身体はだるいし、頭は痛いしで最悪のコンディション。
だけど、私にここでのんびりしている暇はない。
せめて、彼が目を覚ます前にここから立ち去らなくては……。
背中に感じる素肌の温かさに鼓動を高鳴らせながらも、絡み付く手をそっと引き離す。
乱れたベッドから這い出ると、その下に昨日身に付けていた服や下着が散乱していた。
慌ててかき集め、音を立てないように着替えていく。
「うっ……」
こんな緊急事態にも関わらず、二日酔いは容赦なく私を追い込む。
なんとか支度を終え、ベッドサイドに置かれたバッグから財布を取り出し、一枚入っている一万円札をバッグと引き換えに置く。
忘れ物がないか最終チェックをざっとし、最後にチラリと彼を見る。
起きる気配なくぐっすりと眠っていることにホッとしながら、起こさないように静かに部屋をあとにした。