【医者恋シリーズ3】エリート外科医の蜜甘求愛


嘘……誰か、嘘だと言って。

恐る恐る首を捻り、覚悟を決めて背後の光景を目にする。

そこにあった端正な顔に、息が止まりかけた。

ふわふわとした意識の中で見た、艶っぽい表情がフラッシュバックする。

やってしまった……色んな意味でやってしまった……。

そろりと顔を元の位置に戻して、ひとまず落ち着こうと深呼吸する。

そのせいでお腹が動いたからか、巻き付いている腕が私の身体を抱き直す。

身体はだるいし、頭は痛いしで最悪のコンディション。

だけど、私にここでのんびりしている暇はない。

せめて、彼が目を覚ます前にここから立ち去らなくては……。

背中に感じる素肌の温かさに鼓動を高鳴らせながらも、絡み付く手をそっと引き離す。

乱れたベッドから這い出ると、その下に昨日身に付けていた服や下着が散乱していた。

慌ててかき集め、音を立てないように着替えていく。


「うっ……」


こんな緊急事態にも関わらず、二日酔いは容赦なく私を追い込む。

なんとか支度を終え、ベッドサイドに置かれたバッグから財布を取り出し、一枚入っている一万円札をバッグと引き換えに置く。

忘れ物がないか最終チェックをざっとし、最後にチラリと彼を見る。

起きる気配なくぐっすりと眠っていることにホッとしながら、起こさないように静かに部屋をあとにした。

< 23 / 110 >

この作品をシェア

pagetop