【医者恋シリーズ3】エリート外科医の蜜甘求愛


ここで再会してから、数日に一度は顔を見ていた。

仕事の用がなくても呼び付けられたり、病院内でばったり会ったり、なんだかんだで顔を合わせていたのに、もうしばらく市來先生を見ていない。

お盆休みを挟んだのもあるけれど、それがなかったとしても一週間以上会わないのは知り合ってから初めてのことだった。

何食わぬ顔をして、脳神経外科の外来前を歩いていく。

三つある診察室の前を通りながら確認した本日の担当医に、市來先生の名前は入っていなかった。

もしかしたらオペに多く入っていて、姿が見えないのかもしれないと思い、そのまま普段は訪れない外科棟へと足をのばしてみる。

人が多く賑やかな外来の雰囲気とは違う、静かでどこかピンと張りつめた空気が漂っていて、外科棟の入り口付近の廊下で足が止まってしまった。

例えるなら、神聖な場所という感じがして、部外者は立ち入ってはいけない気さえする。

帰ろう。
そう思って踵を返そうとした時、

「患者がアウェイク中に雑談するアホがどこにいんだ!」

そんな、市來先生の罵声が聞こえてきた。

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