【医者恋シリーズ3】エリート外科医の蜜甘求愛
続いて奥から数人が足早に歩いてくる足音が聞こえて、慌てて近くに設置されている自動販売機の陰に身を寄せる。
こっそりと覗くと、チャコールグレーのオペ着の市來先生と、その後ろを揃ってモスグリーンのオペ着を着た三人の若いドクターがついて歩いてきた。
市來先生に辛辣な言葉を浴びせられた三人は、口々に「すみませんでした!」と謝罪を口にする。
近付いてくる久しぶりに見た市來先生は、眉根を寄せて苛つきを露わに、相当ご立腹が窺える。
オペの直後なのだろう、手術帽を被って乱れた髪を指で散らして直していた。
程なくして、すぐ近くの廊下の角を曲がって集団が去っていく。
足音が消えていき、小さく息を吐き出した。
前に芽衣子ちゃんが言っていた。
市來先生を希望し、この病院を紹介してもらってくる患者さんもいるくらいだと。
最近はオペが立て続けに入っているのかもしれない。
何やってんだろ、私……帰ろう。
無意識に市來先生の姿を探してさまよった自分に戸惑いながら、来た道を戻っていく。
次の訪問先と約束の時間を確認しようとロビーの片隅で立ち止まると、「中条さん」と背後から突然声をかけられた。