剣心一如!~「教えてやろうか?恋の仕方」─香取くんの恋愛指南は辛く厳しく、超絶甘い!?

 朝香取くんに逢った廊下に駆け付けると、ちょうどロッカールームに向かう我が校剣道部員たちがこちらに向かってくるところだった。その中で私は真っ先に香取くんを見つける。


「……!」

 香取くんも直ぐに私に気付いてくれる。


 私の目の前まで来た香取くんが立ち止まる。


「香取?」

「あ、先行っててください」

 香取くんが先輩に言うと、先輩はにやっと笑って香取くんを肘で小突いて、先にロッカールームに戻っていった。



「香取くん…あの…」

 優勝おめでとう、とか、腕大丈夫?、とか、すごくカッコ良かった、とか、それに、酷いこと言ってごめんね、とか。言いたいこといっぱいあったのに、言葉に詰まって何も出てこなくなる。
 じんわり汗の滲む掌でスカートをぎゅうと掴む。


「見ててくれた?」

 黙り込む私に香取くんが問う。


「…うん。うん!」

 私は何度もこくこくと頷く。


「…星宮が…いたから」

「え?」

「…星宮が来てくれたから本気でやれたんだと思ってる」

「!!」

「ありがとな」

「そっ、そんなこと!」

 私はくるくる首を振る。


「香取くん、ごめん…真剣に生きてないなんて言って…」

「そんなの気にしてない。実際真剣に生きてなかったし。

 それより…」

 香取くんが眼を逸らし、髪をくしゃくしゃと掻き上げる。


「…俺のこと、まだ嫌い?」


「……!!ううん!」

 今度はさっきよりぶんぶんと首を振る。


「はぁぁぁぁ…」

 それに香取くんは大袈裟なくらい大きな溜め息を吐いた。心なしか頬が赤い。


「香取くん?」

「いや…正直星宮に『嫌い』って言われたのはこたえた…」


 えっ?そっちなの?そんなことなの?
< 102 / 131 >

この作品をシェア

pagetop