剣心一如!~「教えてやろうか?恋の仕方」─香取くんの恋愛指南は辛く厳しく、超絶甘い!?
夜の帳が下り、月のない絶好の花火日和。
ヒュー、ヒュー…パパパーン!
黒々とした天頂に登り竜が上がった。
「うゎあ…!」
星宮が感嘆の声を上げる。
ドーン、ドドーン!!
次から次へと光の帯が空へ上り、赤や緑色の花が漆黒の空を彩る。
ドーン!パーン、パラパラ…
大きな垂《しだ》れ柳が金色の尾を引きながら天を覆うように広がり、光を降らす。
いとまなく空に弾ける花、花、花。
「夢見てるみたい…」
隣で星宮が呟く。
「……」
覗き見た星宮の横顔は牡丹花火の目映い赤色に鮮やかに映し出され、夜闇にいっそう美しく浮かび上がる。
降り注ぐ光の色が変わる度その表情を変え、その切り取った一瞬は儚くて切なくて、胸の奥がきゅっとなる。
(星宮…)
夢みたいなのは君の方。
お願い、どうか『ソイツ』のところに行かないで。
俺の隣からいなくならないで…
空を見上げたまま、地面に付いた星宮の右手に自分の左手をじりじりと寄せる。
そ…
と触れる小指と小指。
ずっと触れたかった─
驚いた星宮がこちらを見た。俺は構わず掌で星宮の柔らかで小さな手を包み込む。
打ち上がる花火の振動がドキドキと胸を震わす。
「星宮…」
あぁ、この掌から俺の想い全部、星宮に伝わったらいいのに。
星宮、好きだ、好きだよ!
こんなにも心で叫ぶけど、届くことはない。
たとえ届いたって星宮には…
「お前…来年は好きな奴と来たい?」
頷かないで。
自分で訊いておきながら情けないけど胸が痛い。