王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~
ただし、アイリーンの伝言はオブラートに包み、掻い摘んで伝えよう。父が寝込んでしまっては、国政に差し障る。
なにより、アイリーンの言にも一理ある。一事業者に対し、国の先行きを説き、事業案の修正を促す事に意味はない。
「其方の言うように、国政として結婚子育て支援を充実させ、若者が結婚に夢を抱けるような環境にもっていかなければ、状況の根本解決には至らない。父も大臣らも、もちろん分かっていよう。だが、それを押しても一言言わずにはいられなかったのだろう。事実、それくらい其方の事業の影響力は大きい」
「まぁ、ほほほ。お褒めに預かり光栄ですわ。ではフレデリック殿下、私はこのへんで失礼いたします。ごきげんよう」
パタンと扇を閉じると、アイリーンは颯爽と席を立つ。
優美にドレスの裾を捌ながら、アイリーンは立ち去り際に、一人分の紅茶代を卓に置いた。
卓に置かれた紙幣に、アイリーンの頑なな心を垣間見る。