王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~


「ほほっ。一体何の事だか私にはさっぱり。では失礼」

 アイリーンは俺に背中を向けたまま素っ気なく言い放ち、今度こそ店を出て行った。
 その凛とした後ろ姿から、俺はしばらく視線を外す事が出来なかった。

「エミリー、其方は凄いな……」

 かつてアイリーンが傷心のまま屋敷を飛び出した時、屋敷に残されていたのはノートの端に書かれた走り書きだけ。

 けれどそれは、アイリーンの遺書に相違なかった。残された誰もが、最悪の事態を想定した。
 仮にアイリーンが自ら命を絶たなかったとしても、貴族令嬢が身ひとつで彷徨えば、その末路など火を見るよりも明らかだった。

 そこを偶然にエミリーと、その祖父母が保護した形だ。けれどエミリーのした事は、アイリーンの保護に留まらない。



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