王子?団長?どっちもお呼びじゃありません!!~異世界悠々おひとりさま満喫日記~


「その通りです。俺も今朝まではずっと、薬の効果を信じていました。いや、信じたいと思っていました」

 今朝まで? ミハルの語る内容は要領を得ず、これだけではよく分からなかった。

「だけど、あんな紛い物の薬と、耳に優しい甘言ばかりを囁くペテン師より、俺にはエミリーの誠実な態度と実直な言葉の方が、よっぽど心に響いたんです!」

「エミリー?」

 ミハルの口から飛び出した、思いもよらない名前。

 どうしてここで、エミリーの名が出てくる!?

「フレデリック団長、俺のうちがこれまで大金出して買っていたのは生姜と人参、蜜柑の皮だそうです。ここまでくるともう、馬鹿らしくって涙の一滴も出て来やしません。だけど今朝、エミリーに指摘された時、俺は思ったんです。エミリーは自分の利益なんて度外視で、患者の事だけを考える。昨夜だって一睡もしないで、妹の為に調薬をしてくれました。だから俺、騙されたと憤るより、それを的確に指摘してくれて、誠心誠意尽くしてくれるエミリーに出会えた事を幸いと思おうって」



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